ベストマリアージュ
帰ったと思ってた私が、こんな隣の、しかも男の一人暮らしの家にいるなんて知ったら!


し、しかもキスとかしちゃってるし!


おまけにさっきなんか、抱き締められちゃったし!


私は思わずブンブン首を横に振った。


もちろん、開けないで!って意味だ。


「りょーかい」


優也がそう言ってくれたから、私はホッと一息ついたのに……


目の前が急に明るくなって、私は思考回路が止まった。


りょーかいって……言ったよね?


なんでドアを開けてるのぉぉぉ!!


そのまま固まる私。


ニヤニヤしながらドアを開けたまま押さえる優也。


そして――


玄関を覗きこんださとしの、驚いたような怒ったような、顔。


次の瞬間、さとしは優也の胸ぐらを掴んで睨み付けていた。


「てめぇ、何やってんだよ、あ?」


怒鳴るわけでもなく、静かで低い声。


それが逆にすごく怖くて、私はそのまま動けなかった。


止めなくちゃ……


無理矢理連れ込まれた訳じゃない。


私が、自分でこの部屋に入ったんだって、言わなきゃ……


頭ではそう思うのに、口の中はカラカラで、言葉が出てこなかった。


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