ベストマリアージュ
「だーかーら、さとしとなんかあって泣いてんだから、無理でしょ?

だから、ひとまずうちで落ち着かせてから、そっちにまた行ってみればって言ってたの

ね?珠美ちゃん」


急に振られてビックリしたけど、この場合、優也に乗っかるのが得策だよね?


「うん、そう!そうなの!」


勢いよく返事したら、今度は私がジロリとさとしに睨まれた。


ひぇー、怒ってる、しかもそうとう……


「あ、そ、そりゃどうも

じゃあ、そういうことなら連れてくから」


優也から手を放したさとしは、今度は私の腕をグイッと引っ張った。


玄関の外に無理矢理引っ張り出されたとき、優也と一瞬目が合った。


優也は涼しい顔で人差し指を口の前に当ててる。


(内緒だよ?)


口の動きだけでそう言って、バイバイと今度は手を振って玄関のドアを閉めた。


私は返事も出来ないで、さとしに引っ張られるまま、隣の部屋に連れていかれる。


ガシャンと乱暴に開けられたドアの中に、私は押し込まれた。


顎で上がれと促されて初めて気づいた。


(私、靴、履いてない!)


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