ベストマリアージュ
「だ、だって!

帰れって言ったじゃん!」


(もうどうにでもなれ!)


反撃されるの覚悟で目を瞑ってそう叫んだのに、いつまでたってもさとしの声は聞こえてこない。


あれ?と思って瞑っていた目を恐る恐る開けてみると、さとしは横を向いてイライラした様子で何か考えてるみたいだった。


「さ、さとし?」


ギロッと睨まれて声をかけたことを後悔してると、いきなりはぁーと大きな溜め息を吐いてからさとしはガクッと項垂れた。


また何回目かの沈黙が流れる。


やっぱりこれは帰った方がいいよね?


「あ、あの、私……

やっぱり帰るね?」


居たたまれなくなって、私は立ち上がった。


そのまま帰ろうとすると、さとしにひき止められる。


「待てよ」


怒ってるわけじゃなさそうな、覇気のない声。


驚いて振り向くと、もうすでにさとしは私の近くにまで来ていて……


「わりぃ……」


弱々しい声でそう言って、そのまま私を抱き締めた。


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