ベストマリアージュ
自分が先に入り、次に彼が入るのを見届けてから、食べ終わった容器をごみ袋に突っ込む。


布団をひいて寝る支度を整えると、急に虚しくなった。


大地の傍で眠ることが出来るのは、今日が最後なのだと改めて思い知る。


今までは嫌われたくなくて、彼の前で泣くこともなかったけれど、今は彼と離れたくなくて涙が溢れた。


「珠美?」


いつの間にかシャワーを終えた彼が、戻ってきていた。


布団の前で佇む私を不思議に思ったのかもしれない。


背中越しにわかる彼の気配に、私の体はピクリと動いた。


泣いてるなんて思われたくない。


そっと気づかれないように涙を拭う。


それから笑顔を作って後ろを振り向いた。


「あ、出たの?もう寝る?」


うん、ちゃんと笑えてる。


「そうだな?そろそろ寝るか」


そう言って笑った彼の顔も、少し無理してるように見えたのは気のせいだろうか?


二人でいつものように、同じ布団に横たわる。


抱き合うでもなく、肩が触れる距離でただ眠るだけ。


すぐ隣で寝ている大地の温もりを感じながら、私はこれで最後なのは嫌だと思った。


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