ベストマリアージュ
シュンとしながら顔を上げると、さとしはじっと探るように私を見ていた。


「ほんとだな?」


「うん、ほんとほんと」


ふぅ……と息をついたと思うと、さとしは少しだけ口の端を上げる。


「お前が言うと軽いんだよ、バーカ」


「な、なによ!

こっちは真剣に言ってるのに!」


「うるせ、余計な心配させやがって」


「そ、それは……ごめん」


そこは素直に謝ると、わかればいんだよ、と立ち上がった。


さっきからソファーと私を行ったり来たり、忙しいやつだなぁと思う。


「じゃ、なんか食いにいこうぜ?」


もう話は終わりとばかりに私の腕をグイッと引っ張って立たせると、自分はスウェットのまま上着を羽織った。


その格好で?と思ったけれど、こいつが着てるとなんでも様になるから不思議だ。


「行くぞ」


財布を手にして玄関に向かいながら、呆然としている私にそう声をかける。


あーあ、給料日前で金がねぇっつーのに……


そう一人ごちるさとしのあとを追いながら、私は慌てて口を開いた。


「あ、お金なら私が出すから」


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