ベストマリアージュ



約束通りの誕生日プレゼントは、有名ホテルのジュニアスイート。


夜景のよく見える部屋を予約してくれたというさとしは、別にいいのに私の誕生日の日にこだわった。


だから当然さとしは普通に仕事で、私は一人先にホテルのロビーで彼を待っている。


さっきから何度も見ている腕時計の針はすでに9時を過ぎていた。


約束は8時半だから、30分は待ってることになる。


ラウンジでお茶でも飲んでれば良かったんだろうけど、そんな気にもなれずに太い柱に背をつけて正面玄関が見える位置に私は一人、手持ちぶたさに立っていた。


「はぁ……遅いなぁ……」


せっかく用意してくれたのは嬉しいけど、こんな風に待ちぼうけの誕生日って、なんだか虚しくなる。


行き交う人もさっきからジロジロ見てくるし、可哀想な子だと思われてたりして……


店は7時半には終わるから、早めに帰してもらうって言ってたのにな……


鞄から携帯を取り出して見てみても、着信もないしメールもきてない。


だんだん不安になる気持ちを奮い立たせて、9時を5分過ぎたところでフロントに向かった。


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