ベストマリアージュ
「あ、珠美?悪い、最後の最後で飛び込みの客でさ

まだロビー?」


「ううん、もう部屋にいるよ」


「そっか、ごめんな?

ほんとは一緒に部屋に行って、珠美の驚く顔見たかったんだけど……」


さとしにしては珍しく、素直というかなんというか、いつもなら絶対言わないようなセリフを口に出すほど余裕がないのかもしれない。


「うん、すごい素敵な部屋だね?

ありがとう、さとし」


素直に感謝の気持ちを伝えると、さとしは我に返ったような声を出す。


「ま、まあな?

俺が用意したんだから当然だろ?」


ぷっと笑ってしまいそうになりながらも、そうだね?なんて相づちをうつ。


すると今度は真剣な声で、さとしが申し訳なさそうに謝ってきた。


「そんなわけだから、悪いけどもう少し待ってろ

たぶん10時には着けると思うんだけど……

腹減ったろ?ルームサービスとってもいいし、上に食べにいっててもいいから」


「え……一緒に食べれないの?」


「あぁ……ほんとなら一緒に食う予定だったけど、無理だろ?」



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