ベストマリアージュ
仰向けに寝ていた体を起こして、彼の腕にしがみつく。


「珠美？」


驚いたような声で私を労るように彼は名前を呼んだ。


その声さえも、もう聞くことが出来ないんだと思ったら涙が溢れた。


彼のパジャマの腕の辺りが僅かに湿っている。


そこでようやく、私が泣いているんだと大地は気が付いたみたいだった。


そっと髪を撫でる大きな手が切なかった。


お互いが向き合った形になっていると言うのに、やっぱり大地は抱き締めてはくれない。


それが彼女への遠慮なんだとしたら、それは違うと思った。


だって私への遠慮があったなら、彼女を抱くことなんかしなかったはずだ。


だったら、今ここで私を抱き締めたって、彼女への裏切りとは言えない。


だって私が先にいて、彼女は後から割り込んできたんだから。


「大地……抱いて？」


涙を止められないまま、くぐもった声でそう言えば、彼は一瞬息を呑んで、悲しそうな声で言った。


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