ベストマリアージュ
ニコッと笑って見せる。


泣いたりしょげたりしてたら、優也を喜ばせるだけ。


この人は私を傷つけたいだけなんだから。


「ふうん、結構根性あるじゃん」


妖艶な笑みを浮かべながら、優也の手が近づいてくる。


ビクッと首を竦めると、頭にその手が乗った。


そのままくしゃっと髪を撫でられて、戸惑った。


なんのつもり?


目だけを優也に向けて、その真意を窺う。


「その根性に免じて、今日はこの辺で許してやるよ」


最後にポンポンて頭を軽く叩いたあと、優也はじゃあね?と手を振って、今来たばかりのエレベーターに乗り込んだ。


呆然としている私の目の前で、エレベーターの扉が閉まっていく。


優也はまだおどけたように手を振って、閉まる瞬間まで扉から顔を覗かせると私を見て楽しそうに笑ってた。


階下に降りていくエレベーターをしばらくぼんやりと見つめたまま立ち尽くす。


なんだったの?いったい……


脱力したまま私はすぐ横にある化粧室へと向かった。


洗面所の鏡を見て愕然とする。


ひどい顔……


泣いたせいでマスカラが落ちてパンダみたいになってる。


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