ベストマリアージュ
おまけに唇の色もすっかりとれていた。


手の甲でグイッと唇を拭う。


まだ優也の唇の感触が残ってる気がして、そのままゴシゴシと唇を擦った。


部屋に戻って顔を洗わなきゃ……


濡らしたハンカチで目元を拭き取ってみても埒があかないと諦めて、私は重い足取りでエレベーターに乗り込んだ。


67階を押して壁に背中をつける。


幸い、誰も乗ってくることなく目的の階についてホッとした。


部屋のドアを開けてバックをソファーに放り投げると、そのまま洗面所へと向かう。


顔を洗ってメイクし直してから、洗面所を出た。


大きな窓に映るイルミネーションは、すっかりもう消えていて、辺り一面真っ暗だ。


ポツポツと灯りは見えるけど、さっきまでのものとはまったく違っていた。


(あーあ、さとしと夜景見れなかったな……)


時計を見ると、もうすぐ11時になるところだった。


あと一時間で私の誕生日も終わる。


さとしと過ごせる初めての誕生日をすごく楽しみにしてたけど、どうやら最低な誕生日で終わりそうだ。


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