ベストマリアージュ
間に合わない?何が?


さとしの言ってる意味がわからなくて首を傾げていると、私のすぐそばまでゆっくりとさとしが近づいてきた。


枕の辺りで膝を抱えて座っていた私を塞ぐようにベッドに腰かける。


「悪かったな?遅くなって……」


そう言いながら、右手で私の頬に優しく触れてきた。


「誕生日おめでとう」


そう言われてようやく私はさっきの間に合わないかと思ったの意味を理解する。


そうだった。今日は私の誕生日で、さとしがこの部屋をとってくれたんだった。


すごく楽しみにしてたのに……


一番におめでとうって言って欲しかったのに……


そう思ったら涙がこみあげてくる。


瞬きと共に涙が溢れて、さとしは触れていた親指でそっと涙を拭ってくれた。


「ほんとごめん……

一緒に食事して夜景も二人でこの部屋で見る予定だったのに……」


文句の一つも言いたいのに言葉が出てこない。


そうこうしてるうちに、さとしの顔が近づいてくる気配がして私は思わず顔を背けた。


「……やっぱ怒ってるよな?」



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