ベストマリアージュ
優しく言ってくれてるはずなのに、どこか冷たく聞こえるのは罪悪感からなのか。


それとも離れた場所から言われてるからなのか。


言葉とは裏腹に、さとしはもう私を抱き締めてはくれない。


大丈夫、気にすんなって、いつもなら寄り添いながら私に触れるくせに、それをしない。


たぶん、それが怒ってる証拠で、でもそれを精一杯おさえてるのがわかる。


顔を覆っていた両手を力なく下ろしながら、私は泣き腫らした顔でさとしの様子を窺った。


案の定、さとしは私を見てもいなくて、窓にもたれて外を睨むように見ている。


「……さとし」


気づいたら、すがるようにそう呼んでた。


ゆっくりと窓の外を見ていたさとしの視線がこちらに向けられる。


目が合うとさとしは悲しそうに目を伏せたけど、次の瞬間にはいつもみたいに意地悪な笑顔を見せた。


「なんだよ?そんな不安そうな顔すんなって」


大丈夫だから……


そう言ってまた私に近づくとポンと頭の上に手を置いた。


「ただ、自分に腹が立ってるだけ

お前を責める資格なんかねぇのに、ごめんな?」

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