ベストマリアージュ
優しくされればされるほど、また涙が溢れてくる。


頭を横に振って、そんなことないって訴えるけど、喉の奥が詰まって言葉は出てこなかった。


「もう泣くなって……

そんなに泣かれたら俺がへこむっつーの」


ベッドの横に立ったまま私の頭に手を置いていたさとしが、そう言いながら自分の方に頭を引き寄せる。


さとしのお腹辺りに顔を押し付けられて、私は思わずしがみついた。


さとしの匂い……


腰に回した腕にギュッと力を入れると、さとしも私の後頭部に手を添えてもう片方の手で背中を優しく擦ってくれた。


「……誕生日、終わっちゃったな?」


すまなそうな声が上から聞こえてくる。


この日を楽しみにしてたのは、私だけじゃなかったんだと改めて思った。


それからさとしにお礼を言ってなかったことにも気づく。


「ありがと……さとし

この部屋、高かったでしょ?」


泣きすぎたせいで鼻声になってるのがわかる。


「ばーか、んなもん気にすんなって

まぁ……また仕切り直しするから

だから今日はもう寝ろ」


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