ベストマリアージュ
そう言われて思わずもっとしがみついてた。


「やだっ!」


「は?やだってお前……」


何言ってんだよ?と、しがみつく私の顔を覗きこもうとする。


「やだ!今日がいい!」


今日がいい……もう一度小さく呟いてさとしのお腹に顔を埋めた。


「……いいのか?」


困ったような、それでいて確認するようなさとしの声。


私は小さく頷いてキュッとさとしの腰をもう一度抱き締めた。


きっとさとしにはさとしのプランがあって、もしかしたらこんな喧嘩したあとなんて望んでなかったのかもしれないけど……


それでも私は、今日を逃しちゃいけない気がした。


もう顔なんてぐちゃぐちゃで、セットした髪だって乱れまくってるけど、私の心が今だって言ってる。


優也のことが引っ掛かってないといったら、お互い嘘になるんだろうけど。


誕生日の思い出が優也とのキスになってしまうことも嫌だった。


「珠美……」


後頭部にあった手が、髪に差し込まれて、耳を掠める。


そのまま顔を上向かせられて涙を親指で拭われた。


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