ベストマリアージュ
立っていたさとしがゆっくりとしゃがみこんで私のおでこに唇を寄せる。


その唇が目尻に頬に移動して、最後には唇に重なった。


優しい優しいキス。


体温を確かめるように、そっと重ねられたまま、ゆっくりと私の体は反転した。


唇が離されたときにはもうさとしは私の上にいて、私の体はベッドに横たえられる。


だけどさとしはいつまでもなにもしないまま、私の髪を撫でるだけだった。


不安そうに見上げると、フッと笑ってまた唇を寄せる。


それでも深くはならないキスに、言い知れぬ不安がシミのように広がっていった。


「さとし……?」


きっとものすごく情けない顔をしていたんだろう。


さとしが唇の端だけを上げてニヤッと笑う。


「なんだよ?そんな顔すんなっつったろ?」


鼻を摘まんでそう言いながら、さとしは大きく息を吐いて、よっこいしょと体を起こした。


同時に私も腕を引っ張られて上半身を起こされる。


(……えっ?)


予想外の行動に困惑しながらさとしを見ると、何かを考えるように呟いた。



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