ベストマリアージュ
「だって……私とは出来ないってことでしょ?」


しがみついたまま涙声でそう言えば、さとしは少し呆れたように、お前バカだろ?と笑った。


「今日は無理って言っただけだろ?

あいつとちゃんとけじめつけねぇと、負けた気がしてやなんだよ」


あいつって優也のこと?


けじめって……


「珠美にちょっかい出さないように、ビシッと言わないと気がすまない」


あームカつく、と言いながら笑うさとしに私は複雑な気持ちになった。


どこまで優也に聞いてるのか知らないけど、この様子じゃキスしたことまでは聞いてない気がする。


食事をしたことだけ伝えられてるなら、これ以上さとしが優也に詰め寄ったら、全部ばらされる可能もあるのだ。


「……なんて言ってたの?」


敢えて名前は出さない。


もう墓穴を掘るのはこりごりだ。


「いや、こっちに向かってる途中で電話あって、珠美ちゃんのお祝いは俺がしといてあげたからってさ」


電話の様子を思い出したのか、さとしは面白くなさそうにそう吐き捨てた。


「だから何度もお前に電話したのに、全然でねぇからまじで焦った」

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