ベストマリアージュ
たぶん、優也に会うリスクを減らしたいんだと思う。


けど、さとしはあれから優也の名前を一度も口にしない。


それが逆に気にしてるって言ってるみたいで、なんとなく釈然としなかった。


「だから午前中から待ちわせてどっか行こうぜ?

クリスマスプレゼントとか買ってやるよ」


その方が好きなの選べんだろ?なんて、口は悪いけど、やたらと優しいから申し訳なくなる。


結局私は、優也とキスしたことを言えなかった。


だからさとしはあの日私と優也は食事しただけだと思ってる。


言ったって誰も幸せになんかならないし、後ろめたくても黙ってた方がいいに決まってるけど、優也がいつ喋るんじゃないかって気が気じゃないのも確かだ。


「珠美?どうした?」


ぼんやりとそんなことを考えていたのを見透かされたみたいにそう声をかけられて携帯を取り落としそうになる。


「え!?なんでもないよ?

プレゼント、さとしにもあげたいなぁと思って何がいいか考えてた、ごめん……あはは」


苦しいかな?とも思ったけど、さとしはまんざらでもなかったみたいで、嬉しそうにそうだなぁ……なんて考えてる。


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