ベストマリアージュ
「私もイブに髪切りにいこうかなぁ……」


ぬくぬくと温かくなって少し眠くなりながら、一人言のようにそう呟くと、さとしが慌てたような声を出した。


「まさか、うちの店に来るつもりじゃねぇだろうな?」


ぼんやりとその言葉を頭の中で繰り返して、ようやくその意味を理解する。


「や、そんなつもりで言ったわけじゃないけど……」


まどろみかけてた頭が一瞬にしてはっきりした。


きっと優也に会わせたくないからなんだとわかってはいるけど、そんな風に言われると面白くない。


損な性格だと自分でもつくづく思う。


「じゃあ、別の店に行くのかよ」


少し怒ったような声がして、どっちなんだとイラッとした。


自分の店には来てほしくないくせに、他の店にも行ってほしくないなんてわがままじゃない?


「だって、さとしの店に行っちゃだめならそうするしかなくない?」


売り言葉に買い言葉。さとしと話してるとついそうなってしまう。


だって私だって綺麗になってクリスマスのデートしたいもん。


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