ベストマリアージュ
「お前の髪のくせは俺が一番よくわかってんだから、他のやつに切らせると後が面倒なんだよ！

だから、他の店には行くんじゃねぇぞ！わかったな！」



そう捨て台詞を残して、プツリと電話は切れた。


しばし呆然としながら、切れた携帯を見つめる。


それから急に笑いがこみ上げた。


（自分が切りたいから他のやつには切らせるなって素直に言えばいいのに）


そんな罰当たりなことを思いながら、今度さとしが帰ってきたら髪を切ってもらおうと決めた。


私だって、本当は別の店で切ろうとか思ってなかったし、さとし以外の人に髪を触られるのも抵抗がある。


開いたままの手帳を見ると、クリスマスまでにさとしが帰ってこれるのはあと一日だけだった。


この日に切ってもらえばいいよね？


クリスマスの三日前。つまり明後日だ。


２２日のところにペンで丸く印をつける。


切ってもらうのはこれで三回目。


少し伸びた毛先に触れながら、さとしのハサミを持つ指先と真剣な表情を思い出す。


（仕事モードのときは、カッコいいんだよなぁ……）


顔が熱くなるのを感じてペタリと頬っぺたをこたつの天板にくっつけた。

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