ベストマリアージュ
「あ、いや、その……な、なんでもない!」


まだどっちにするのか決めてなかったことを思い出して、慌ててさとしから目をそらす。


クリスマスは夜しか会えなくなったって言うか、それとも優也とキスしたことを伝えるか……


きっとクリスマスの昼に仕事だって言ったら怒り出すに決まってる。


でもキスしたなんて言ったら怒るよりも悲しませることがわかってるだけに言い出せなかった。


今回やり過ごしたとしても、優也はまた脅してくるに決まってるのに勇気が出ない。


「なんだよ?気持ち悪ぃな

言いたいことあんなら言え」


ハサミを腰にあるシザーズケースにさしたさとしは、今度は鏡越しじゃなく回り込んで私の顔を覗きこむと親指と人差し指で頬っぺたをグイッとつまんだ。


途端に私の唇はタコみたいになる。


「ひょっほ、ひゃめへよ!」


うまく喋れないながらもそう抗議すると、さとしはブハッと吹き出した。


「おもしれぇ顔!ぷっ!」


クックッとお腹を抱えて笑いながら指を離すと、で?なんなんだよ?と改めて聞き返される。


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