ベストマリアージュ
「あ、あのさ……」


仕方なくそう切り出すと、さとしはまたハサミとコームを手に私の髪を掬う。


「なんだよ、早く言えって」


目線は私の髪だ。今のうちに言わなきゃ。


「ク、クリスマスの日、昼間会えなくなった」


ギュッと目を瞑ってそう言い切ると、はぁ?と不機嫌な声がして、ハサミとコームがまたシザーズケースにしまわれた。


「ふざけんなよ!苦労して休みとったんだぞ?

なんで会えねぇんだよ!」


やっぱり……怒るよね?


でも注目すべきはやっぱり無理して休みを取ったんだってことだ。


「仕事……に出なきゃなんなくなって……それで……」


「仕事だぁ?お前こないだ休み取れたって言ってたじゃねぇか!」


「そ、それがやっぱりダメって言われて……」


「なんだよ、それ!
そんな仕事辞めちまえ!」


鏡越しに睨まれて、ウッと言葉に詰まる。


私はただのパートなわけで、休みが取り消されるわけないってさとしだってわかってるんだ。


おまけに大地の奥さんに会ったときに嘘ついた前科があるから、もしかしたら信じてないのかもしれない。
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