ベストマリアージュ
「だ、だから……さとしも……さ?

昼間仕事してから、夜会おうよ?

お店……忙しいんでしょ?」


上目遣いに鏡の中のさとしを見ながらそう言うと、さっきまで怒ってたさとしの顔がスッと無表情になる。


私を見ていた目も逸らされて、そのまま鏡の中からいなくなった。


背後でギッ……と音がして、ベッドに座ったんだとわかる。


黙ったままのさとしに、私の中に言い知れぬ不安が広がっていった。


何か……間違えた?


でも、優也の言いなりになってる時点でもうすでに間違えてるのかもしれない。


仕方なく後ろを振り返って、さとし?と声をかけてみる。


「お前さ、それ、誰から聞いたんだよ?」


「えっ?」


「俺、言ったよな?クリスマスはそれほど忙しくないから大丈夫だって」


あ……


「優也と連絡とってんの?」


名前を出されて動揺した。


目を見開いて息を呑んでしまったのをさとしに見られてしまった。


これじゃ、はいそうですって言ってるようなもんだ。


慌てて取り繕うように俯いたけど、さとしはチッと舌打ちをしてやっぱり……と呟く。


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