ベストマリアージュ
「さとし!早かったね!」


思わずそう叫ぶと、さとしはクックッと肩を揺らして笑いだす。


「もぉ!なんで笑ってんの?」


人がせっかく喜んでるっていうのに!


「だってお前、犬みてぇ、ぷ」


い、犬って……


一応、あなたの彼女なんですけど!


まだ笑いのおさまらないさとしに、怒りを通り越して溜め息がもれる。


ほんとにこの後、ロマンチックな雰囲気になんかなるんだろうか?と、一抹の不安がよぎった。


「……行くよ?」


冷たい目でそう言うと、さっさと受付を済まそうとカウンターに向かって歩き出す。


「は?ま、待てよ、ちょっ!勝手に行くんじゃねぇよ!」


肩を掴まれてしかたなく足を止めた私は、わざとゆっくり振り返ると呆れたように溜め息をつく。


じとーっと冷めた目で見つめながら。


「てめぇ、なんだよ、その顔は!」


案の定、さとしは怒り始めたけど、怒りたいのはお洒落して待ってたのに犬とか言われた私の方だ。


「……どうせ犬ですから
変な顔ですみませんね」


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