ベストマリアージュ
「はぁ?しかたねぇだろ?そういう顔なんだから、気にすんな」


自分が言ったくせになぜか慰めるような言葉をシレッと言い放ち、スタスタと私を通りすぎて受付カウンターに向かうさとし。


ダメだ、あいつはこういうやつだった。


ガックリしながら、まともに取り合った私がバカだったと諦めてさとしの背中を追った。




部屋に入ると、この間と同じ素晴らしい夜景が飛び込んでくる。


今回は一人じゃなくて、さとしと二人一緒に見ることが出来て胸がいっぱいになった。


さとしもゆっくりと窓ガラスに近付いて、感慨深げに見つめてる。


「綺麗だね?」


隣に並んでそう言えば、さとしはあぁ……と答えながら、そっと私の肩を抱き寄せた。


途端に体が緊張して、心臓の音がうるさいくらいに鳴り始める。


(ど、どうしよう!まだ油断してたんですけど)


これからレストランで食事をする予定だったから、甘い雰囲気はそのあとなんだと勝手に思ってた。


でももしかしたら、このままってこともあるのかもしれない。


「こないだは見れなかったからなぁ

上からの景色もすごいんだろ?」


(……へ?)


見上げると、さとしはまだ窓の外を眺めたままで、興奮気味に食いついてる。

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