ベストマリアージュ
(あれ?なんかただ夜景を楽しんでるだけのような……

だったらこの手はなんなのよ!)


一人で先走っていたことが恥ずかしくなって、乱暴にさとしの肩に置かれた手を振り払う。


「さ、ご飯食べにいこ?

私、お腹ペコペコ」


「は?お前、色気より食い気かよ!」


ったく、しかたねぇなぁ……と、しぶしぶ後からついてくる。


振り払ったことについては、特に気にしてないみたいだ。


(良かった……ていうか、なんで私ばっかりこんなにドキドキしてんのよ!)


赤くなってるだろう顔を見られたくなくて、私は部屋を出てさっさと歩き始める。


それでもさとしは機嫌を損ねることなく、そんなに腹減ってんのかよ?といつもみたいに笑って、通りすぎ様に私の手をとった。


「ちょっ!な、なにしてんの?」


手を繋ぐなんて、今までされたことがなかったから、恥ずかしすぎて思わず手を引いた。


けどその手が離されることはなく、逆にキュッと握り直される。


「なにって……別によくね?恋人同士なんだし?」


ニッと口の端をあげるさとしは、さらに指を絡めると、エレベーターへと素知らぬ顔で歩いていく。


(こ、こいつ!わざとか?)

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