ベストマリアージュ
エレベーターの中でも繋がれた手はそのままで、どぎまぎしてるのは私だけだった。


さとしはご機嫌で最上階につくと、レストランに入っていく。


もちろん、手は繋いだままだ。


女の店員さんにチラッと見られて恥ずかしくなった私が手を離そうとしたのに、さとしはそれを許さない。


結局、席につくときまでそのままの状態で、私はすっかり変な汗をかいてしまった。


「すっげー、やっぱ最上階は迫力あるな?」


のんきに窓の外を覗きこみながら、さとしは興奮気味にそう言った。


「うん、ほんとだね?

こないだ来たときは、全然気付かなかった」


私も一緒になって外を眺める。


「そっか、お前二回目なんだよな?

なに食ったの?そんとき」


少しトーンダウンした声でそう聞かれて戸惑った。


「え……なんか、よくわかんないけどコース料理?」


「わかんないってなんだよ?

自分で選んだんじゃねぇの?」


テーブルに肘をついて顎を手で支えながら、不機嫌そうにそう言われて目が泳ぐ。


「勝手に頼まれちゃったから……」


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