ベストマリアージュ
優也の名前をお互い一切口にしてないくせに、妙に意識してるのがわかる。


さとしはあのとき、けじめをつけるって言ってたけど、こないだの優也からの電話の感じじゃ、話し合ってはいないんだろう。


無視されてるとは言ってたけど、何か言われたとは言ってなかった。


「ふうん……あ、そ

じゃあ、それ以外にしようぜ?

飲み物は?なにがいい?
シャンパンとかいっとく?」


気にしてない風を装っても、やっぱり優也に対抗しているような気がして、私は妙に胸がざわざわした。


「ワイン……がいいな?」


そんなに飲めないのは知ってるはずだから、変に思われたかな?とも思ったけど、それしか言いようがなかった。


こないだ優也とシャンパンは飲んだからなんて口がさけても言いたくない。


さとしはチラッとメニュー越しに私を見ただけで、じゃあワインにするかと呆気なくそれを受け入れた。


(なんか……やだ)


このモヤモヤ感はなんだろう?


臭いものに蓋をするこの感じ。


こんなんじゃ、さとしとの初めての夜をちゃんと楽しめない気もする。


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