ベストマリアージュ
やっぱり、最初に決めた通りちゃんと言うべきだ。


嬉しそうなさとしを見ていて、言い出せなかったけど、きちんと優也のこと話さなきゃ。


そう思っていたのに、ワインを飲んでから……食事が終わったら……と、先伸ばしにしてしまって、結局言わないまま部屋に戻ってきてしまった。


パタンと閉じたドアの音と同時に、さとしが私を後ろから抱き締めてくる。


「珠美……」


(え?もう?まだ何も言えてないのに……)


「ピアス、つけてきたんだな?……似合ってる」


耳元でそう囁かれて、やばいと思った。


このままじゃ雰囲気に流されちゃう!


「あ、ありがとう!

あのね?実は私もさとしにプレゼントあるんだ!」


わざとそう言って、さとしの腕から逃れると、さっきテーブルに置いた紙袋からプレゼントの箱を取り出す。


それからさとしの方に向き直ると、はい!とそれを手渡した。


「あぁ……サンキュー」


甘い雰囲気をぶち壊されて気分を害したのか、さとしの態度はぶっきらぼうで、プレゼントを受け取りはしたものの、そのままパサッとソファーに放り投げた。


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