ベストマリアージュ
「中身、見ないの?」


詰めてくる距離分を後退りながら、そう聞いてみる。


「後でゆっくり見るよ

今はいい……」


ダメだ!もうその気になってる!


「あ、あのさ!話があるんだけど」


もうすぐ目の前まで来ていたさとしに、私は仕方なくそう待ったをかける。


「あ?なんだよ

今じゃなきゃダメなのか?」


当然、さとしは不機嫌そうにそう言って、その場でピタリと足を止めた。


「うん、今じゃなきゃダメ!」


本当は怖い。怖いけどこのままさとしとそういう風になったら絶対後悔する。


けじめはちゃんとつけなきゃ。


そうしなきゃ、この先もずっと優也の言いなりになっちゃう。


チッと舌打ちをしながら、さとしはベッドに腰かけた。


「で?なんだよ、話って」


両手を後ろについてバランスを取りながら、早くしろとでも言うように私を見る。


「あ……あのね?実は今日のことなんだけど……」


「今日?」


怪訝な顔で聞き返されて、一瞬怯みそうになるのをこらえた。


「……仕事って言ってたけど、嘘なの」


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