ベストマリアージュ
「そういうわけじゃ……」


後ずさろうとしても、手首を掴んださとしの手はびくともしない。


「お前が今日、仕事だから俺にも仕事しろって言った時点でなんかあるのはわかってたよ

優也が絡んでんじゃないかってこともな?

けど、夜は普通に会えるって言うし、来てみたらお前もお洒落して来てるし、だったら余計な詮索なんかすんのよそうって思うだろ

せっかくのクリスマスなんだし楽しまなきゃって」


グイッと引き寄せられて、私の体はさとしの腕の中に捕まった。


言葉とは裏腹に抱き締める腕が優しくて……


「ごめ……なさい

でもさとしにもう隠し事したくなくて……

さとしと……そうなってからじゃ、怖くて言えなくなるって思ったの

自分勝手だよね?

せっかくさとしがこうしてまた機会を作ってくれたのにさ……」


ベッドの端に腰掛けたさとしの足の間に座らされて後ろから包まれるように抱き締められていると、顔が見えない分不安になる。


でも逆に顔が見えないから言える気もした。


「私ね?……私、優也にキスされた」


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