ベストマリアージュ
ピクッとさとしの体が動いた。


反応が怖くて私もまた体を硬くする。


コクリと自分の唾を呑み込む音が、やけに響いてるような気がした。


シン……と静まりかえる部屋の中とは逆に、夜景だけがアンバランスなほど綺麗に見える。


「そっか……」


ふいにキュッと私を抱く腕に力がこもる。


後ろから小さく息を吐くのを感じた。


怒った?それとも呆れてる?


次の言葉を待つ間が、怖くてたまらない。


「それであいつの言いなりになってたってわけか……」


ポツリと呟くように吐き出された言葉が妙に悲しそうで、今更ながらにやっぱり言わない方が良かったのかな?と後悔してしまう。


「珠美」


「……ぃ」


喉の奥が詰まってうまく返事が出来ない。


「お前はそれでどうしたいわけ?

俺にどうしてほしい?」


「……え?」


私はどうしてほしいと思ってた?


ただ謝って、さとしに許してもらいたかっただけ?


それとも真実を伝えてスッキリしたかったの?


違う!優也に弱味を握られてるのが嫌だっただけだ。


さとしが怒って何とかしてくれるかもしれないって、心のどっかで思ってた。


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