ベストマリアージュ
そんな私の浅ましい考えを見抜かれたような気がした。


自分は悪くないんだって、優也が勝手にやったことだって、さとしに言ってもらいたかったのかもしれない。


ここまで来といて、今それを言うなんて、確かにさとしに失礼だ。


髪を切ってもらった日だって、今日までの間だって、言うチャンスはいくらでもあったのに……


「ごめん……私の自己満足……

全部話してすっきりして、隠し事のない状態でさとしと結ばれたかっただけで……

さとしの気持ちとか、なんにも考えてなかった」


ごめんなさい……ともう一度謝ってから、首だけを後ろに向ける。


思いがけずさとしの表情は柔らかいもので、怒ってるわけじゃないことに戸惑った。


泣きそうになって前を向こうとすると、さとしの左手が私の頭を固定して、そのまま唇がゆっくりとスローモーションみたいに重なる。


優しい優しいキスに、涙が堪えきれずに溢れだした。


「泣くな……」


離された唇からは優しい声。


「大丈夫、お前の気持ちはわかったから……」


頬と頬が擦りあって、目尻に瞼にさとしの唇が寄せられる。


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