ベストマリアージュ
いつのまにかワンピースの胸元にさとしの右手が差し込まれていて、ピクンと私の身体が跳ねる。


「あ……ゃ……」


小さく抵抗するけど、さとしの指は止まることなく、私の肌に沿うように滑り落ちていく。


いつのまにか身体は反転していて、背中に柔らかなスプリングの感触がした。


さとしの手が優しく髪を撫でて、おでこにそっと唇を寄せる。


いつもの俺様っぷりからは考えられないくらい、やわやわとゆるゆると指が唇が優しくて……


気づけば私は生まれたままの姿にされていた。


恥ずかしくて身を捩るけど、そのたびにいろんな場所に口づけられて、わけがわからなくなっていく。


「珠美……」


そう呼ばれたと同時に彼の熱が私の中いっぱいに入ってきて、私は思わずシーツを握りしめた。


ようやく一つになれたという思いが私の涙腺を弱めていく。


目尻からあとからあとから涙が溢れて止まらなくなった。


「なに泣いてんだよ……」


そんな私に気づいたさとしが、動きを止めて親指で涙を拭ってくれる。


「だ……って……」


嬉しくて……と鼻を啜りながら言うと、さとしは呆れたように口の端を上げた。


「ばーか、まだ終わってねぇっつーの」


クッと笑ったと思いきや、今度は切羽詰まったような目で私を見つめる。


動くぞ?と言いながら増した質量に、私は泣いてる余裕さえなくなっていった。


< 286 / 307 >

この作品をシェア

pagetop