ベストマリアージュ
翌朝、父と母は嬉しそうに旅行に出掛けて行った。


久しぶりの一人の時間は、嫌なことを思い出しそうで落ち着かなくてそわそわする。


こういうちょっとしたことでも、自分の傷がまだ癒えてないんだと実感してしまう。


もしかしたら、そんな私が寂しくないように、母は智に食事を作れなんて言ったんだろうか?


まさか……ね?


そうだとしても、あいつと顔を合わせるのは気が重い。


昔からあいつはそうなのだ。私の失敗を指差して笑うような……そんな意地悪なとこがあった。


まったく年下の癖に生意気なのよ。


私が結婚してこの家から出ていった時、あいつはまだ21歳だった。


成人したてのほやほやで、結婚出来たなんて嘘みたいだと最後まで悪態ついてたっけ……


小学生かっつーの!


可愛くない弟みたいな、私の中であいつはそんな括りだった。


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