ベストマリアージュ
恐る恐る尋ねると、さとしはいつもの意地悪な顔でニヤッと笑った。


「またこないだみたいに突撃された方が、あいつに付け入られんだろうからな?

珠美の好きにすればいい

それに……」


「それに?」


そう聞き返すと、さとしは悪戯っ子みたいな顔をする。


「今日、優也にはきっちり話つけてきたし」


……え?てことはさとしはもう自分なりにけじめをつけてきたってこと?


「な、なんて?」


動揺しながらそう言うと、さとしはフッと笑って私から遠退いた。


ベッドから起き上がると、そのまま自分のコートに歩み寄る。


すぐに戻ってきたさとしの手には何かが握られてて……


「こういうこと」


そう言いながら私の体を引っ張り起こして、左手の薬指に何かをはめた。


「結婚しようぜ?珠美」


あまりにもあっさりとそう言われて、頭がついていかない。


(嘘でしょ?結婚?これって……婚約指輪?)


まじまじと薬指を見つめながら、何も言えずにいると、さとしがおい!と私の頭を軽くはたいた。


「返事は?」


ハッとして指輪からさとしに視線を移すと、困ったように笑うさとしの顔。


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