ベストマリアージュ
クリスマスの前までは、俺の言いなりだったはずなのに、気づいたら先にさとしから釘をさされて驚いた。


あの日、出勤してきたさとしを見て、あの子が俺の指示通りに動いたんだと内心歩くそ笑んでたっていうのに。


誕生日の日、電話で俺が彼女と食事したって伝えてから、ずっとシカトしてたあいつが、その日はまっすぐ俺のとこに来やがった。


『お前、珠美になんか言ったろ?』


てっきり俺に文句でも言うのかと思ったのに、さとしはうっすら笑ってて。


『残念だったな?俺たちの仲を壊そうとしたんだろうけど、その手には乗らねぇから』


その自信に満ちた顔に腹が立った。


だから言ってやったんだ。


『あの子から何聞いたのか知らないけど、さとしの知らないことまだあるんじゃない?』


まだキスのことは知らないと、なぜだか確信していた。


そうじゃなきゃ、こんなに冷静にしてなんかいられないと思ったから。


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