ベストマリアージュ
「じゃあね?さとし、またいつでも呼んでよ」


そう言って出てきた可愛らしい女性とぶつかりそうになった。


「キャッ!」


「わっ!ごめんなさい!」


荷物がある分、こちらの方が危うかったけれど、なんとか持ちこたえた。


彼女の方も特に転んだとかではなく、驚いてよろけただけみたいだった。


「あれ?珠美?」


今、一番会いたくない人の声がする。


あぁ、逃げ出したい……


だってこれってあれだよね?親が旅行でいないから飯作りに来てよとか言って、彼女に作りに来てもらったとか、そういう状況だよね?


明らかにあたしはお邪魔虫だ。


もう、だから言ったのに!お母さんのバカ!


惨めすぎて涙が出そうになった。


バカみたいにこんなに食材買い込んで、恥ずかしすぎる。


「ねぇ?この人誰?」


立ち竦んだまま固まっていた私の横で、さっきの彼女が鼻にかかった甘えた声でさとしに聞いた。


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