ベストマリアージュ
その中に少しだけ棘があるように聞こえたのは私だけだろうか?


「あ、私……「俺の姉貴」


私の声に被せてさとしがそう言った。


はっ?今、なんつった?


「えぇ~、さとしにお姉さんなんかいたっけ?」


さらに甘えた声に拍車をかけながら、くねくねとさとしの腕に絡み付く。


「そ、いたの

お帰り、姉ちゃん。早く入んなよ。荷物貸して?」


そう言って私の腕から荷物を取り上げて、玄関の中へと押しやられる。


「んじゃ、そういうことだから。ありがとな?理央

姉貴が帰ってくんの知んなかったから、頼んじゃって悪かったな?お疲れさん」


「さと……」


バタン!


彼女がまだ何か言っていたのに、さとしはとっとと玄関のドアを閉めた。


なんなの?これ……


あの女の子、彼女じゃないの?


でも彼女にしては、言い方がひどくない?


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