ベストマリアージュ
だけどこんなとこで泣いたら、またこいつにからかわれるに決まってる。


なんとか涙を堪えて、急いでカレーライスを乗せたお盆をテーブルへと運んだ。


「用意出来たよ?」


そう声をかけると、ようやく食材をしまい終えたのか、冷蔵庫から缶ビールを二本取り出してこちらにやってきた。


「ん」


「えっ?」


「お前も飲めよ、ビールくらい飲めんだろ?」


そう言って強引に押し付けてくるビールを、私は仕方なく受け取った。


とっとと食べて帰りたかったんだけどな……


さとしに気づかれないように小さく溜め息をつくと、缶ビールのプルタブをプシュッと開けた。


久しぶりに飲むビールは意外なほど美味しくて、冷えた液体が喉を伝っていく感覚が心地いい。


家では父も母もお酒を飲まないから、居候の私が飲むのは気が引けて、ここ何ヵ月も飲んでなかった。


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