ベストマリアージュ
「やっと笑った」


目の前で同じようにビールを飲んでいたさとしが、ふいにそう言った。


「え?」


「お前、さっきからずっと眉間に皺寄せたまんまだったからさ」


そう言われてハッとする。


確かに嫌々だったけど、顔にまで出てたとは思わなかった。


「あぁ、ごめん」


そう言って彼の顔を初めてまじまじと見た。


あれ?こいつこんなに、いい顔してたっけ?


憎らしい昔の顔しか印象になかった目の前の幼なじみは、テーブルに頬杖をつきながら微笑んでる。


意地悪しか言わなかったこの男が、こんな顔も出来るんだと、私は変に感心してしまった。


さとしがまだ私の顔を見つめてる。


なんだか調子が狂って恥ずかしくなってきた。


直視出来なくて目をふいと彼の顔から逸らすと、さとしは面白そうに私に言った。


< 37 / 307 >

この作品をシェア

pagetop