ベストマリアージュ
しばらくその窓を見つめた。もしかしたら顔を出すんじゃないかって、そんな気がしたから。


けれど彼の顔がその窓から覗くことはなかった。


バカみたい。


何を期待したのかわからないけれど、自分がものすごく惨めな気がした。


ムワッとしたアスファルトからの熱気が顔まで上がってくる。


もう一度汗を拭うと、さとしの部屋から目を逸らして、自分の家の玄関を開けた。


中に入ってすぐ右の壁にかけてある時計をチラリと横目で見ると、針は7時を少し回ったところを指している。


そろそろ父が起きてくる時間だ。


母はすでに起きているらしい。


お味噌汁のいい匂いが玄関までしてきて、私の腹の虫がグゥ……と鳴った。


急いでシャワーを浴びて身支度を整える。


居間に顔を出したとき、すでに父も食卓についていた。


卵焼きとアジの開き、お浸しにお新香、それに味噌汁とご飯。


私の席には納豆もちょこんと置かれていた。


父の前には焼きたらこが置いてある。


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