ベストマリアージュ
――え?……誰?これ……


ボサボサだった髪は顎のラインで切り揃えられており、少し前下がりのボブになっている。


さっきまで、あか抜けなかった自分が、年齢よりも若く見える気がした。


「どうだ?見違えたろ?」


自信満々で、そう言ったさとしの顔は、相変わらずバカにしたような上から目線だ。


でもそんなの気にならないくらい、私は興奮していた。


「うん!すっごくいい!
見違えたよ!さとし!ありがとう!」


振り返り様にそう言って、私はさとしに抱きついた。


特に意味もない、ただの喜びの表現として。


それに対してなんのリアクションもしないさとしを不思議に思って、抱きついたまま見上げてみた。


やめろよ!とか、そんなセリフで突き飛ばされるかと思ったのに、顔を横に向けたまま固まってる。


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