ベストマリアージュ
首を傾げながら、私はさとしに声をかけてみた。


「お~い、さとし?どした?

あ、もしかして可愛くなった珠美ちゃんに抱きつかれて照れちゃってるとか?」


さとしの部屋で昔を思い出していた私にとって、抱きつく行為なんか恥ずかしくもない。


さとしももちろんそうだろうと、わざと茶化すようにそう言ったのだ。


なのに……


「ふ……っざけんな!」


そう言って私を引き剥がしたさとしの顔は真っ赤で……


何……?これ?これじゃ、まるで……


「お前の貧弱な体に抱きつかれたって、嬉しくもなんともねぇよ」


――あ、そ……


だよね?そんなはずない。


「だいたい、お前!

なんなんだよ、その服!
ダボダボでみすぼらしいったらないぞ!」


だいぶいつもの調子に戻ってきたさとしにホッとしながら、その問いに答えた。


「あのねぇ、これは痩せたからサイズが合わなくなっちゃったの!

本当は美容院に行った後、洋服買いに行く予定だったんだからね!」


プウッと頬を膨らませて文句を言うと、さとしは、ふうんと小さく呟いて、何か考える素振りを見せた。


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