ベストマリアージュ



「あのなぁ!おっ前、俺が休みのたんびに来んじゃねぇよ!」


お決まりのセリフに怯むことなく、私はさとしの部屋にある大きな鏡の前を陣取っていた。


目的は一つ。


さとしにメイクを教わるためだ。


「しかも、こんな朝っぱらから来やがって!

お前、バカだろ?」


いくら罵声を浴びせられようとも、一向に気にならない。


何故ならそう言いながら、最後は必ず付き合ってくれることを知ってるからだ。


髪の毛も可愛くしてくれたし、洋服も真剣に選んでくれて、さとしのおかげでだいぶマシになったことは感謝してる。


意外だったのは、チャラいあいつなら、ギャルみたいな服を選ぶんじゃないかって心配してたのに、割とナチュラル系のものを選んだことだ。


着やすくて馴染みもよく、おまけに若く見える。


だけど子供っぽくならない絶妙のバランスに、ちょっとだけ見直したっけ。


今日も選んでもらった服を着て、朝の9時から叩き起こした。


< 64 / 307 >

この作品をシェア

pagetop