ベストマリアージュ
「お前さぁ……」
「ん?なに?」
「なんでそんなに綺麗になりたいわけ?」
「なによ、急に……
女の子ならみんな、綺麗になりたいって思うでしょ?」
「や、男でも欲しいのかなと思ってさ」
「はぁ?違う違う
彼氏が欲しいとかじゃないから」
「紹介してやろうか?」
「だから!違うって!」
いつものさとしの部屋。
自分でしたメイクを見てもらうために、私はまた朝からここを訪れている。
休みのたびに来るさとしの部屋は、すっかり当たり前になっていた。
そのたびにダメ出しされて、結局、やり直しをされるんだけれど、それもすっかりお馴染みだ。
「実はね?大地に会いに行くためなんだぁ」
何の気なしに言った私の言葉は、さとしの地雷を踏んだらしい。
「はぁ?なんだそれ?
浮気されて離婚されて、挙げ句の果てに慰謝料も払わなかった男に、なんでいまさら会いに行くんだよ!」