ベストマリアージュ
さとしは撫でていた手をピタッと止めて、諦めたように拳を握りしめていた。


「そんなに言うなら会いに行けばいい

それでお前の気持ちの整理がつくんならな?」


怒ってるような、呆れたような、そんな声。


もっと頭を撫でていてほしかった……なんて言えないような、雰囲気がさとしを覆う。


それでも……


「うん、そうする

大地に会って、綺麗になったって言わせるの

もしかしたら、私が一番だって思い直してくれるかもしれないし……」


涙はもう出なかった。


自分の決心が、わりと強かったことに、驚く。


さとしはまたチッと舌打ちをして、しかたねぇな?と笑ってくれた。


それから今度はニヤリと不敵な笑みを浮かべて、私に近づいてくる。


そんなきれいな顔で、寄らないでよ……


そう、思って思わず目をつぶったと同時に、唇に……何かが触れた。


「……っ!」


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