ベストマリアージュ
内腿を執拗に撫で上げられて、ビクンと体が反応する。


唇は未だ塞がれたままだ。


――やだ!怖い!


そう思ったとき、さとしの唇も撫でていた手も、突然スッと離された。


何がなんだかわからなくて、呆然としていると、そっと親指が私の目元を拭う。


そこで初めて、自分が泣いていることに気付いた。


「悪い……やりすぎた」


ポンポンと頭を撫でられて、ますます涙が溢れる。


「俺、出掛けてくるから……

落ち着いたら帰れ」


そう言い残して、さとしは部屋を出ていった。


涙が止まるまでしばらくかかったけれど、ノロノロと起き上がる。


いつもメイクをしてもらう大きな鏡には、マスカラもアイラインも全部とれてしまった、自分の顔が映ってた。


黒い涙が頬に筋を残し、最悪の顔になっている。


私、なにやってるんだろう?


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