ベストマリアージュ
「私は……この約束があったから、大地と離婚することに同意したの

別れてからも、会ってくれるって希望があったから、納得できた……

大地のために綺麗になって、それで……」


鼻の奥がツンとして、涙が出そうになった。


それを堪えようとしたせいか、声を詰まらせてしまう。


そんな私を見て、大地は小さく息を吐いた。


それから、わかったよと悲しそうに笑う。


優柔不断な彼の、こういうところは、好きでもあり嫌いでもある。


優しさは時に残酷だってことを、大地はわかってない。


ホテルは前もって予約しておいた。


二人の再会に相応しいようにと、少し値の張る部屋。


窓から見える夜景はとても綺麗で、ラブのつくホテルじゃない、ブラウンを貴重としたセンスのいい部屋は、私を逆に興奮させた。


未だ部屋の入口に突っ立ったままの大地は、ここまできてまだ躊躇してるんだろうか?


「ワインでも飲む?」


そう聞きながら、彼の手を取る。


中へと誘(いざな)う自分の手が、なんだか自分のものじゃないような錯覚をおこさせる。


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