ベストマリアージュ
こんな風に自分からリードすることなんか考えられなかった以前の私。


受け身な私を好きだと言ってくれた大地は、本当は物足りなかったのかもしれない。


ワインでもと言っておきながら、私はそのままダブルベッドへと彼を促す。


そこに座らせて、彼の顔を両手で挟み、そっと唇を重ねた。


それから、彼の唇に舌を割り入れ、口内に侵入させる。


大地は驚いたようにピクンと体を強張らせた。


あの頃、触れるだけのキスしかしなかった私の変化に、戸惑っているんだろう。


あの日、さとしから教わったキスは、きちんと効果が出てる。


その証拠に、ほら、彼の息は熱い。


絡めとるように舌を動かせば、されるがままだった大地の舌も私に応えるように次第に動き始めた。


さとしのときと同じように、キスで感じる瞬間。


あの頃のキスは、おままごとみたいなものだったんだと改めて気づかされる。


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