ベストマリアージュ
私が彼を感じ、彼が私を感じてくれる。


そんな当たり前のことが、あの頃にはなかったのかもしれない。


私は大地を感じていたと思っていたけれど、彼は満足していなかったのだ。


だからあの子で足りない部分を埋めてたのかもしれない。


皮肉なことに、大地が達しようとするのと反比例するように、私の気持ちはどんどん冷めていった。


幸せだと感じた瞬間から私の中で、何かが終わったのかもしれない。


置いてきぼりだった私の気持ちが、ようやく消化出来たみたいな……そんな気持ち。


私の腹部に散らされた白濁色の液体は、終わりを告げていた。


まだ息も荒く、ベッドに横たわりながら上下する胸を見つめる。


私はティッシュでそれを拭き取ると、無言で下着と服を身につけた。


「珠美?」


そう呼ばれて振り返ったけれど、私は一言だけ彼に伝えて、部屋を出た。


ありがとうと一言だけ伝えて……



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